宇宙航空環境医学 Vol. 45, No. 4, 173, 2008

研究奨励賞受賞講演

異なる負荷強度のトレーニングがヒト外側広筋に対する影響

寺田 昌弘

大阪大学生命機能研究科

Responses of Vastus Lateralis Muscle Fibers to Cycling Training with Different Loading Parameters in Human

Masahiro Terada

Graduate School of Frontier Bioscience, Osaka University

筋収縮様式は大きく分けてeccentric,concentric,isometric運動がある。このうちeccentric運動が最も筋損傷を生じやすいことが知られている。また,筋萎縮・肥大時には筋核数がそれぞれ減少・増加することも知られている。更に我々の研究室では小さな筋核はより大きな筋核よりもタンパク質合成が活発であるという結果も得ている。そこで今回の実験ではロシアで作製された自転車エルゴメーター装置を用いてどのようなメカニズムで外側広筋へ効果があるのかを解明するため実験を行った。この装置は,ペダル回転方向を変化させることによって被験者にeccentricならびにconcentric運動を分けて負荷させることが可能である。また座席部がスライドし,運動中被験者は座席を一定の位置に引き上げるが座席が下にスライドすることによって被験者の下肢に負荷が加わる。22人の成人ロシア男性被験者をhigh velocity concentric運動,high velocity eccentric運動,low velocity eccentric運動の3群に分けた。運動1分・休憩10分を1セットとし1日5-7セットを週2回,8週間トレーニングしそのトレーニング前後に外側広筋よりbiopsy sampleを採取した。その後,単一筋線維分析において筋線維横断面積,筋核数,筋核横断面積を測定した。筋線維横断面積は,両eccentric運動で有意に増加したが,筋核数および筋核横断面積には有意な変化は認められなかった。また,筋核支配領域はhigh velocity eccentric運動で有意に増加していた。以上の結果から,自転車エルゴメーター運動においても筋肥大誘発にはeccentric運動が有効であることが示唆された。また,この肥大メカニズムは筋核の増加を伴わず筋核支配領域の増加によって筋核機能が亢進したことによると考えられる。