「フライト・サージャンの役割と要請」3.　航空自衛隊の航空医官制度 | Flight Surgeons in Japanese Air Self Defense Force

宇宙航空医学認定医セミナー

「フライト・サージャンの役割と要請」
3.　航空自衛隊の航空医官制度

桒田　成雄

航空自衛隊航空医学実験隊

Flight Surgeons in Japanese Air Self Defense Force

Naruo Kuwada

Aeromedical laboratory, JASDF

<航空自衛隊の航空医官制度> 　自衛隊は，その航空業務の特殊性から，独自の航空身体検査規則体系を有している。航空自衛隊は，航空身体検査に携わる医官として航空医官及び航空身体検査判定官の2つの資格を設けており，各々の要件は空自規則によって定められている。なお，米軍とは異なり，航空医官にフライト義務はない。
　<養成課程> 　○航空身体検査判定官　航空自衛隊医官の場合，米空軍初級航空医学課程（AMP）を参考に昭和35年に開始された航空医官課程を履修することにより，航空身体検査判定官の資格を得る。現在本課程は自衛隊岐阜病院及び航空医学実験隊において，座学，航空生理訓練（低圧，加速度，空間識，射出座席)，体験搭乗等を含め約6週間にわたって実施されている。これとは別に，部隊等で6ヵ月以上航空衛生業務に従事した3等空佐以上の階級にある医官にも資格が付与されることとなっており，中途採用された公募医官については，こちらの条件によることができる。
　○航空医官　航空身体検査判定官に指定された後，上級航空医官課程（米国委託課程，10ヵ月）を履修するか，部隊においておおむね2年以上航空衛生業務に従事することにより，航空医官の資格を得る。
　<主要業務> 　○航空部隊における業務
　航空身体検査，低圧室飛行前身体検査の判定，操縦士等における傷病の治療経過を受けた医学適性の判定等に従事する。医学適性判定に際しては，航空業務停止期間（1ヵ月未満，3ヵ月未満，1年未満，1年以上）によって判定のレベルに差を設け，停止期間が長期にわたる者の判定は逐次上級部隊の航空医官によることとしている。また，専門的見地からの所見を集約して判定に資するため，航空医学実験隊に医学適性審査委員会を設置し，各部隊からの上申に応ずる態勢をとっている。
　○航空事故調査に係る業務
　航空事故が発生した場合，当該航空機所属基地の医官に加え，航空自衛隊航空安全管理隊に配置された航空医官が調査業務に従事する。
　○民間の航空身体検査に係る業務
　国土交通省技官（併任・出向）として大臣判定に係る業務に従事する場合もある。