宇宙航空環境医学 Vol. 45, No. 4, 168, 2008

宇宙航空医学認定医セミナー

「フライト・サージャンの役割と要請」
宇宙航空医学認定医セミナー
 —— アメリカ空軍のフライトサージャン(USAF/FS)制度を中心に ——

緒方 克彦1,岩崎 賢一2

1防衛医科大学校
2日本大学医学部衛生学

Aerospace Medicine specialist seminar
 —— discussing the Flight Surgeon training led by USAF ——

Katsuhiko Ogata1, Kenichi Iwasaki2

1National Defense Medical College
2Nihon University School of Medicine, Department of Hygiene

本学会では2004年から宇宙航空医学認定医制度を開始し,毎年月に行う日間の講習会を受講した学会員医師に認定医資格を与えている。開始以来の年間で合計102名が宇宙航空医学認定医として学会から認定されているが,その内訳は一般の勤務医,開業医に加えて,航空業界産業医,航空医官,航空身体検査指定医と,実に様々な航空医学分野で活躍する先生方が応募されている。
 またこれらの講習会活動等を通して,宇宙・航空の安全を守るために,両医学分野を理解する医師が増えていくことが有用であるとの認識や所見が多数寄せられてきた。そのため今回は資格取得後の勉強会として,「飛行安全を達成するためのFSの任務とその養成」について,各分野の指導的立場の先生方からの説明をセミナー形式で御講演頂くこととした。特に主題でもあるUSAF/FS制度については,米軍横田病院長(第374医療群司令)でもあり在日米軍司令部医務官も兼任されているRobinette大佐にお願いした。大佐は最も経験ある航空軍医に与えられるChief of Flight Surgeonであり,USAFでパイロットの健康管理・医学適性審査等に加えて,日米間或いは環太平洋地域での患者搬送についても多くの知見を有されており,「フライトサージャンとは?」という私たちの疑問への回答を頂いたと確信している。
 USAFではNASAとFS交流が多年行われてきたが,近年は我が国の航空宇宙医学業界も,少しずつ相互交流を深めてきている所である。民間航空,自衛隊,有人宇宙開発部門のFSがお互いに啓発しながら次世代の専門医養成に努力されている実態も併せてご紹介した。