宇宙航空環境医学 Vol. 45, No. 4, 163, 2008

シンポジウム

「宇宙における長期滞在」
1. 将来月面活動構想

落合 俊昌

三菱重工業株式会社 神戸造船所 先端製品・機械システム部 宇宙機器設計課

Future Luna Activity Concept

Toshimasa Ochiai

Mitsubishi Heavy Industries, LTD

現在,世界が抱える重要課題として,地球環境問題がある一方,国内では,その他に安全・安心の実現,エネルギー問題,少子・高齢化,科学技術立国の基盤作りなどの課題を抱えている。そこで,三菱重工では,宇宙開発を通じて,これら重要課題解決への糸口を探ることを目的に,月面活動構想を策定した。本構想では,欧米・中国・ロシア・インドなど,世界的に月探査への回帰がみられる中,日本として進むべき姿として,まず2017年頃までに月面での天文観測や岩石分析などの科学探査を実現し,その後,2030年頃までに月面基地建設などの有人活動を実現し,それ以降,有人長期滞在,惑星探査などの展開を想定している。また,本構想を実現するにあたっては,多様なアーキテクチャが必要になり,それら技術は,日本が現在保有している延長線上に存在するものと考えられ,特に月面開発に最も重要な輸送系と生命維持系については,技術課題はあるが,実現できる見通しはあるものと考える。また,それら月面活動のミッションシステム,アーキテクチャを活用することにより,環境問題等の課題解決に役立ち且つ社会生活を豊かにできるか,またどのようなスピンオフがあり得るかについては,宇宙太陽発電による代替エネルギー確保,CO2 固定化技術による温暖化対策,スラッシュ水素による無公害自動車などがその候補として挙げられる。今後の月面を含む今後の宇宙開発においては,その過程,もしくはゴールに国民生活に還元する姿が必要になるものと考える。