宇宙航空環境医学 Vol. 45, No. 4, 153, 2008

一般演題

39. 空港クリニックにおける呼吸器疾患の検討

村越 秀光,浅野 悦洋,岩瀬 龍之,牧野 俊郎

日本医科大学成田国際空港クリニック

Study of Respiratory disease at the Airport Clinic

Hidemitsu Murakoshi, Yoshihiro Asano, Tatsuyuki Iwase, Toshiro Makino

Nippon Medical School Narita International Airport Clinic

緒言: 日本医科大学成田国際空港クリニック(空港クリニック)は '05年4月から '08年3月までの最近3年間で46,547名の外来患者に対応した。このうち呼吸器疾患について検討した。研究対象: 呼吸器疾患の症例総数は14,701例(31.6%)で,空港勤務者,旅行者,航空機乗務員の罹患率,重症度,インフルエンザ感染頻度について検討した。 結果: 空港勤務者9,289例(63.2%)が最も多く,次いで旅行者3,703例(25.2%),航空機乗務員1,154例(7.8%),その他555例(3.8%)の順だった。外国人は1,260例(8.6%)だった。月別では10月から翌年4月までに多数認められたが,その他の月でも,約800例以上の受診数を数えた。重症度をみると重症はインフルエンザA型の1例のみで以下,中等症781(5.3%),軽症13,919例(94.7%)だった。年代別では20歳代が4,836例(33.0%)で最も多く,次いで30歳代4,135例(28.1%),40歳代2,312例(15.7%),50歳代1,766例(12.0%)と続いた。インフルエンザは742例(約5.0%)で空港勤務者400例(53.9%),旅行者260例(35.0%),航空機乗務員37例(5.0%),その他45例(6.1%),外国人44例(5.9%)に認められた。A型が514例(69.3%)で最も多く,ついでB型63例(8.5%),不明80例(10.8%),疑い例85例(11.4%)だった。月別をみると12月から4月までが多く,特に1月から3月までが608例(81.9%)と著明に高率だった。 考察: 空港クリニックにおける過去3年間の呼吸器疾患は空港勤務者が最も多く,次いで旅行者,航空機乗務員と続いた。インフルエンザはA型が多く,空港勤務者が5割を占めた。新型インフルエンザが懸念されるなか,空港内の閉ざされた空間に世界諸国の旅行者が往来する極めて特殊な環境のもとでは,万全の予防対策を講ずる必要がある。