宇宙航空環境医学 Vol. 45, No. 4, 139, 2008

一般演題

25. 60歳以上の準高齢者および高齢者旅客に快適な空の旅を提供する方策についての検討

牧野 俊郎,浅野 悦洋,村越 秀光,岩瀬 龍之

日本医科大学成田国際空港クリニック

Discussion of comfortable Airtravel for aged people over 60 years old

Toshiro Makino, Yoshihiro Asano, Hidemitsu Murakoshi, Tatsuyuki Iwase

Nippon Medical School Narita International Airport Clinic

緒言: 成田国際空港は開港より30年が経過した。年間旅客数は3,400万人を上まわる状況で年々増加傾向にある。特に最近の動向として60歳以上の準高齢者および高齢者の旅客の増加が著しい。準高齢者および高齢者旅客に快適で安全な空の旅を提供するには,いかにすべきかについて検討する。研究対象・方法: 当空港クリニック最近5年間の症例総数79,757例のうち60歳以上の準高齢者および高齢者旅客3,091例(12.8%)を対象に,疾患,救急症例,予後について考察した。結果: 60歳以上の旅客の疾患で最も多かったのは腹痛156例(21.6%)で,次いで外傷120例(16.6%),呼吸器疾患89例(12.3%)と続いた。救急症例は721例(救急全体の19.4%)だった。死亡例は7例(全死亡例の30.4%)だった。また60歳以上の旅行者血栓症は26例(44.1%),男女比7 : 19,平均年齢68.3±5.4歳(mean±S.D)だった。考察: 60歳以上の準高齢者および高齢者旅行客の旅行中に起こる疾病の動向について検討した。60歳以上の旅客のクリニック受診率は12.8% と低率だったが救急では19.4%,死亡例は30.4% と著明な上昇が認められた。これらのことから快適で安全な空の旅をするためには,常に,年齢をわきまえた自己管理を怠り無く行っていく必要がある。今後も,快適で安全な空の旅を提供できるよう,行き届いた医療サービスを心がけて行く所存である。