7.　連日の対抗措置は模擬微小重力曝露後の起立耐性低下を予防する | The countermeasure of every day prevent decreased orthostatic tolerance after HDBR

一般演題

7.　連日の対抗措置は模擬微小重力曝露後の起立耐性低下を予防する

西村　直記¹，岩瀬　敏¹，菅屋　潤壹¹，清水　祐樹¹，高田　真澄¹，佐藤　麻紀¹，Dominika Kanikowska¹，
鈴木　里美²，櫻井　博紀³，渡邉　順子⁴，石田　浩司⁵，秋間　広⁵，片山　敬章⁵，平柳　要⁶，山本　哲也⁷，
高田　宗樹⁷，増尾　善久⁸，塩澤　友規⁹

¹愛知医大・医・生理2
²愛知医大・看
³浜松大・保健医療学
⁴聖クリストファー看護大・看
⁵名古屋大・総合保健体育科学センター
⁶日本大・医・社会医学
⁷岐阜医療大・保健科学
⁸早稲田大・スポーツ科学研究センター
⁹青山学院大

The countermeasure of every day prevent decreased orthostatic tolerance after HDBR

Naoki Nishimura¹, Satoshi Iwase¹, Junichi Sugenoya¹, Yuuki Shimizu¹, Masumi Takada¹, Maki Sato¹,
Dominika Kanikowska¹, Satomi Suzuki², Hiroki Sakurai³, Yoriko Watanabe⁴, Koji Ishida⁵, Hiroshi Akima⁵,
Keisho Katayama⁵, Kaname Hirayanagi⁶, Tetsuya Yamamoto⁷, Hiroki Takada⁷, Yoshihisa Masuo⁸,
Tomoki Shiozawa⁹

¹Dept. Physiol., Aichi Med. Univ.
²Sch. Nurs., Aichi Med. Univ.
³Hamamatsu Univ.
⁴Sch. Nurs., Seirei Christopher Univ.
⁵Research Center of Health, Physical Fitness, and Sports, Nagoya Univ.
⁶Dept. Hygiene, Nihon Univ. Sch. Med.
⁷Dept. Radiol. Technol., Gifu Univ. Med. Sci.
⁸Waseda Sport Science Research Center
⁹Aoyama Gakuin Univ.

【目的】　我々はこれまで，棒状回転体（直径4 m）を回転させることにより生ずる遠心力を利用した人工重力負荷と，同装置に具備した自転車エルゴメータによる運動負荷の組み合わせが，宇宙飛行後のような微小重力環境曝露時に起こる種々のデコンディショニングに対する対抗措置として有用であるとの報告を行なってきた。今回，20日間のヘッドダウンベッドレスト（HDBR）中に連日（20日間）または隔日（13日間）に対抗措置を行なった時のHDBR後の起立耐性の変化におよぼす効果について，対抗措置を行なわなかった群（対照群）と比較・検討した。
　【方法】　被験者として実験参加の同意が得られた健康成人男性を対象に，2006年度（連日対抗措置群: 6名，対照群: 6名）と2007年度（隔日対抗措置群: 4名，対照群: 4名）に実験を行なった。本研究を行なうにあたり，愛知医科大学医学部倫理委員会の承認を得た。すべての被験者には頭部を-6° 下げた状態にセットしたベッド上に横たわらせ，食事，排尿および排便などのすべての日常生活をその状態で行なわせた。テレビ・ビデオ鑑賞，読書，携帯型ゲームなどは自由に行わせ，被験者のストレス緩和に努めた。1日の食事摂取量は2,300 kcalとし，水分摂取量は，脱水を回避させるために前日の尿量と同量を摂取させた。対抗措置群に対する人工重力負荷は1.0 G，運動負荷は60 W（30分間/日）とし，被験者の同意が得られれば0.2 Gもしくは15 Wづつ負荷を増加させた。HDBR前後の起立耐性の変化は，ヘッドアップティルト（HUT）試験と耐G試験から評価した。HUT試験では，ティルトベッドを15分毎に0°→30°→60° の順に傾斜させた時の筋交感神経活動と血圧の変化から評価した。耐G試験では，人工重力負荷を1.0 Gから5分毎に0.2 Gづつ増加させ，被験者が耐えうる重力負荷と時間から算出した耐Gスコアから評価した。
　【結果と考察】　連日および隔日の対抗措置群では，HDBR前後の筋交感神経活動および血圧の変化にほとんど差が認められず，HDBR後の起立耐性低下を防止できたと推察される。他方，対照群では，HDBR後に筋交感神経活動が増加し，特に2007年度では0° での筋交感神経活動がベッドレスト前（12.2±5.4 beats/min.）に比してベッドレスト後（29.6±10.1 beats/min.）で顕著に増加した。その後の傾斜の増加時にも筋交感神経活動は高い値を維持したにもかかわらず，血圧は傾斜の増加に伴い低下が認められた。このことは，対照群では筋交感神経活動の賦活化に対する血管の反応性（収縮機能）が低下しているものと推察される。また，耐GスコアをHDBR前後の比でみると，連日の対抗措置群では96.7±21.7% と耐Gスコアの低下をほぼ防止できたのに対し，隔日の対抗措置群では50.6±29.7%，対照群では33.7±8.6% とHDBR後に耐Gスコアの有意な低下（P<0.01）が認められた。よって，HDBR後にみられる起立耐性低下の予防対策としては，連日の人工重力負荷と運動負荷がより有効であると考えられる。