宇宙航空環境医学 Vol. 45, No. 4, 120, 2008

一般演題

6. 良性発作性頭位めまい症に対するリハビリテーション: ROM

北島 明美,肥塚 泉

聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉科

Rolling-over maneuver (ROM) as a rehabilitation of BPPV

Akemi Sugita-Kitajima, Izumi Koizuka

Department of Otolaryngology, St. Marianna University School of Medicine

良性発作性頭位めまい症(BPPV)は末梢性めまいの約1/3を占め,日常診療で多く出会う疾患の一つである。原因は,重力のセンサーである耳石が剥脱し,その耳石塊が半規管に移動するためとされる。その治療法として,剥脱した耳石塊を本来の耳石のあった卵形嚢に戻す運動療法canalith repositioning procedure (CRP)がよく知られている。しかしCRPは頸部や体幹の動きが大きいため,整形外科的疾患を合併する症例や高齢者などにとっては施行困難な場合が多い。また,典型的なBPPVの眼振を呈さない症例には適応とならない。我々はこの様なCRPの適応とならない症例に対し,佐藤らの提唱した「非特異的」な運動療法である,rolling-over maneuver (ROM) (佐藤,他 2001, 2006)で治療を行っている。ROMは運動負荷が少ないため患者の不安が少なく自宅でも可能なリハビリ方法(寝返り運動)である。本研究では,後半規管型BPPVに対するROM(Epley法)の奏功率とCRPの奏功率とを比較検討した。その結果,CRP群(n=12)およびROM群(n=10)において眼振が消失するまでの期間は前者が16.1±12.8日,後者が12.0±6.6日であった。回転性めまいが消失するまでの期間はCRP群では13.8±13.4日,ROM群では7.6±2.6日であった。いずれもMann-WhitneyのU検定およびLogrank検定において有意差を認めなかった。ROMはCRPに匹敵する治療効果があると考えられた。BPPVは予後良好な疾患であるとされているが,CRPの適応とならない症例も多々あり,QOLの低下につながりかねない。ROMは,そのような症例に対しても早期治癒につながる方法として有効であると考えられた(Sugita-Kitajima et al. in preparation)。