宇宙航空環境医学 Vol. 45, No. 4, 112, 2008

一般演題

2. 音響性瞳孔反応解析によるめまい診断について

北島 尚治,鈴木 衞

東京医科大学 耳鼻咽喉科

Analysis of auditory-pupillary responses

Naoharu Kitajima, Mamoru Suzuki

Department of Otolaryngology, Tokyo Medical University

 はじめに:
 音刺激による散瞳反応(音響性瞳孔反応)については1863年Westphalが報告して以来,本邦でも1936年の三宅らをはじめ数多く報告されているが,現在ほとんど臨床応用されていない。音響性瞳孔反応の発現起序は聴覚刺激が脳幹網様体系を賦活化し大脳皮質やE-W核,視床下部へ波及すると考えられているが,明らかな機序は分かっていない。第53回日本宇宙航空環境医学会大会にて筆者らは両側高度感音難聴患者を対象に検討し,音響性瞳孔反応が前庭由来成分を含む可能性について報告した。今回,我々はメニエール病および前庭神経炎患者の瞳孔反応について検討した。
 対象と方法:
 対象は平成19年5月から平成20年10月までに東京医科大学病院 耳鼻咽喉科を受診したメニエール病患者13名および前庭神経炎患者7名である。対照にはめまい難聴疾患の既往のない健常者9名を用いた。
 照度400ルクスに保った防音室にて,音刺激(矩形波クリック音,持続0.1 sec 100 dB nHL)後の瞳孔径変化を測定した。測定は両耳刺激,片側刺激をそれぞれ20回ずつ行った。測定データは不整波形を除外した後加算平均し解析した。
 結果:
 メニエール病および前庭神経炎はともに瞳孔反応が増加する傾向が認められた。さらには症状の改善に伴って反応が低下し,カロリックテストなどの前庭機能検査で異常を示す症例ほど強い反応をしめす傾向が認められた。
 考察:
 音響性瞳孔反応の解析により前庭自律神経反射の定性・定量化の可能性を考えた。今後,より多くの症例の集積が必要であろう。