宇宙航空環境医学 Vol. 44, No. 4, 131, 2007

シンポジウム

「我が国のドクターヘリの現状と将来像」
S-2. ドクターヘリとは

三木 靖雄

愛知医科大学病院 救命救急科

What is the doctor helicopter

Yasuo Miki

AMU Hospital‚ Advanced Critical Care Center‚ Emergency and Critical Care Medicine

 2001年より正式導入されたドクターヘリは現在全国,11カ所で運用されている。愛知県は平成14年より第4番目のシステムとして稼働した。このシステムの最も大きな特徴は救急現場への医療機関のスタッフの投入である。医師および看護師を救急現場へ派遣し,早期からの治療開始を主目的としている。救急医療とはいえ,通常,病院へ患者さんが到着してから医療そのものが始まるが,ドクターヘリではより早期から治療を開始することで,患者さんの病態の悪化を防ぐと共に治療後の予後に大きな,良い影響を与えることができる。実際に交通事故などの外傷ではドクターヘリによる対応がなかった場合には,その死亡者が1.5倍から2倍に増えるとの結果が多くの施設から出ている。
 諸外国でも同様の目的のために多くのシステムが稼働している。より多くの可能性を提供するために,日本よりも古くから救急ヘリによる医療は実践されている。ドイツでは,その有効性が高く評価され,基地病院を中心に半径50kmでの活動範囲の円を描くと国土がほぼ覆われてしまうほどである。アメリカでは実に800機以上もの救急ヘリが年間50万件に及ぶ活動を展開している。一方フランスでは医師が積極的にプレホスピタルケア領域にも参加し,救急車のみならず,ヘリや航空機でも活躍している。諸外国での救急ヘリの実状を交え,日本での現状を報告し,近将来のプレホスピタルケアについて紹介する。