宇宙航空環境医学 Vol. 44, No. 4, 109, 2007

一般演題

E-5. 微細気泡浴が循環動態および体温調節機能に与える影響

清水 祐樹1,河原 ゆう子2,小粥 文雄3,岩瀬 敏1,菅屋 潤壹1,犬飼 洋子1,西村 直記1,佐藤 麻紀1

1愛知医大・医・生理2
2東邦ガス(株)リビング技術部
3リンナイ(株)開発本部

Effect of microbubble bathing on hemodynamic change and thermoregulatory function

Yuuki Shimizu1‚ Yuko Kawahara2‚ Fumio Ogai3‚ Satoshi Iwase1‚ Junichi Sugenoya1‚ Yoko Inukai1
Naoki Nishimura1‚ Maki Sato1

1Department of Physiology‚ Aichi Medical Univrsity‚ Nagakute‚ 480-1195‚ Japan
2Toho Gas Co. Ltd.‚ Nagoya 456-8511 Japan
3Rinnai Co. Ltd.‚ Oguchi 480-0132 Japan

 筆者らは,生理学的に効果的な入浴方法について実験を行っている。最近,直径50-100 μmの泡を溶かし込んだ湯を用いた入浴が,健康,美容に有効であることが報告されている。しかし,その作用について温熱生理学的検討はいまだ行われていない。微細気泡浴が循環動態と体温調節機能に与える影響を解析し,その効用を生理学的観点から実証することを本研究の目的とした。
 被験者は30代の健康な女性9名とした。被験者の身長は157±5cm,体重は49.5 kg±4.0 kg,Body Mass Index 19.7±1.7であった。本研究については愛知医科大学倫理委員会「微細気泡浴の効用に関する研究」の承諾を得た。
 実験は愛知医科大学医学部生理学第2講座に設置された人工気候室内のユニットバスにて実施した。入浴方法はさら湯浴,微細気泡浴,微細気泡浴+入浴剤の3種類とした。10分間の安静の後に40°Cの入浴を15分間行い,30分間の後安静をとった。浴室および前室の気温は25°C,相対湿度は50〜70% に制御した。実験中には鼓膜温,皮膚温,皮膚熱流量,心拍変動,皮膚血流量を測定した。
 鼓膜温は,さら湯においては入浴開始と同時に増加し,入浴終了と同時に減少したが,微細気泡浴では入浴開始から5分後までの間にわずかに減少した。前安静と入浴後の皮膚温の差は,さら湯より微細気泡浴,および微細気泡浴+入浴剤が大きかった。皮膚熱流量は,微細気泡浴ではさら湯浴より有意に大きかった。入浴後における心拍変動のHF(0.15-0.4Hz)成分は前安静と比較して大きくなり,LF(0.02〜0.15Hz)/HF成分は前安静と比較して小さかった。微細気泡浴ではさら湯より皮膚熱流量が大きかった。
 以上より,微細気泡浴は体温調節機構に何らかの影響を及ぼし,深部体温を下げることで入浴中の体内への熱流入を大きくし,入浴後における体外への熱流出を大きくすると考えられる。また,微細気泡浴は入浴後の温熱感覚が高く,さら湯と比較して快適でリラックスできる入浴方法であると結論付けられた。