宇宙航空環境医学 Vol. 44, No. 4, 103, 2007

一般演題

D-2. 音響性瞳孔反応解析によるめまい診断の試み

北島 尚治1‚2,渡辺 雄介1,鈴木 衞2

1国際医療福祉大学三田病院 耳鼻咽喉科
2東京医科大学 耳鼻咽喉科

Evaluation of equilibrium function by analysis of auditory pupillary responses

Naoharu Kitajima1‚2‚ Yusuke Watababe1‚ Mamoru Suzuki2

1Department of Otolaryngology‚ International University of Health and Welfare MITA hospital
2Department of Otolaryngology‚ Tokyo Medical University

 【目的】 音刺激による散瞳反応は古くから知られているが,現在ほとんど臨床応用されていない。平野ら(1991)は正常者を対象に音刺激による瞳孔反応を測定し,散瞳反応には2相性の波があると述べている。第1波は主に副交感神経の抑制,第2波は主に交感神経の興奮によるものとし,メニエール病における自律神経機能評価に応用できるだろうと推論している。音響性瞳孔反応の発現起序は聴覚刺激が脳幹網様体系を賦活化し大脳皮質やE−W核,視床下部へ波及すると考えられているが,明らかな起序は分かっていない。我々はこの度,音響性瞳孔反応に対するコンピューター画像解析システムを開発し,末梢性めまい患者を中心に測定し検討した。この反応の発現起序を明らかにするとともに前庭機能検査法として臨床応用することを目的としている。
 【対象と方法】 症例は平成19年5月から10月までに東京医科大学病院耳鼻咽喉科を受診した両側高度難聴患者および末梢性めまい患者21名である。対照としてめまい難聴の既往のない健常人7名を用いた。両側高度感音難聴者においては両側刺激のみ,末梢性めまい患者においては両側刺激に加え,左右個別刺激も記録した。
 【結果と考察】 両側高度難聴患者においても音響性瞳孔反応は生じ,健常者と比べて潜時が有意に早かった。またメニエール病などのめまい疾患では瞳孔径の変化が大きく,これは前庭機能障害の大きい患者ほど顕著であった。これらより,音響性瞳孔反応には網様体を介する経路以外にも,末梢前庭から前庭神経核を介したもうひとつの瞳孔散大経路の存在を考えた。そして音響性瞳孔反応を解析することで前庭自律神経反射の定量化できる可能性を考えた。