宇宙航空環境医学 Vol. 43, No. 4, 2006

特別講演

哺乳類の発育における重力の役割

大平 充宣

大阪大学・医学系研究科・適応生理学

Possible role(s) of gravity in the mammalian development

Yoshinobu Ohira

Section of Applied Physiology, Graduate School of Medicine, Osaka University

我々の祖先は何だったのか? 魚? サル? サルはともかく魚だったら,水中から1-Gの陸に上がって,長い年月にわたって身体組成を変え,しかも二本足で立つようになるまでの過程で,生体にはどのような機構の適応が起きたのであろうか? 水平位の遊泳および歩行から,二足歩行に至る過程では,個々の細胞に加わる重力の方向も変わったわけであり,たとえば骨格筋の抗重力活動には想像に絶するストレスがかかったはずである。
 哺乳類を使った宇宙実験は凍結されてしまったが,科学的挑戦まであきらめる必要はない。我々は,非常に興味深いこの疑問の解明に迫るために,地上に生育する哺乳類が逆に重力の影響のない(または少ない)環境で,生まれ,育ったらどのようなことが起こるのであろうか追求している。これまで得られた示唆と推測から,夢に迫ってみた。