宇宙航空環境医学 Vol. 43, No. 4, 2006

認定医シンポジウム

「空の安全のため宇宙航空医学認定医が活躍する !
—— 認定医の様々な役割と今後の課題 ——」
AM-2. 航空会社における認定医の役割と今後の展開

加地 正伸

株式会社日本航空インターナショナル運航乗員健康管理部

The role and development of the JSASEM Board Certificated Surgeon in the airline companies

Masanobu Kaji

Flight Crew Medical Services, Flight Operation, Japan Airlines International Co., Ltd.

航空会社の医師は,社内の健康管理を含めた医務業務の総括,運航乗務員の航空法の要請に基づく航空医学的な健康管理,全社員の産業医学的な面からの健康管理,機内医療の支援,航空医学,産業医学分野の研究など空の安全を担保するための重大な責務を負っている。これらの責務には,労働安全衛生法ならびに航空法の要請によるものが多く含まれている。当社の健康管理部門の設立経緯をみると,まさにこの両者の要請により設置されたものであることが見て取れる。その経緯の中でも,1982年の羽田沖事故を契機として,航空法の要請による健康管理の重要性が認知されることになった。
 労働安全衛生法では定める規模の事業場ごとに,厚生労働省令で定めるところにより医師のうちから産業医を選任し,その者に労働者の健康管理等を行わせなければならないと定めている。そして,産業医の資格要件は,労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識について厚生労働省令で定める要件を備えた者でなければならないとしている。現状では,この資格要件として広く認知されているのは,日本医師会認定産業医あるいは労働衛生コンサルタントである。
 一方,航空法では航空身体検査証明制度の中で航空身体検査を行う医師に指定医制度を定めているものの,航空会社の医師に対する資格要件は定めていない。しかし最近になって,国土交通省の通達においても,「航空医学に精通している航空会社の産業医(航空産業医)」という公式の記載が見受けられるに至って,航空会社の医師(産業医)にも一定の資格要件が課せられる時流にあると思われる。
 今後,日本宇宙航空環境医学会の宇宙航空医学認定医が航空会社においての健康管理を担当する医師(産業医)の資格要件の一つとして認知されるよう発展することを期待したい。