宇宙航空環境医学 Vol. 43, No. 4, 2006

シンポジウム

「内耳前庭系と循環調節」
S-1. ヘッドダウンティルトが動脈圧に及ぼす影響 −神経性調節機構について−

松尾 聡1,中村 陽祐2,細貝 正江1,河合 康明1

1鳥取大学適応生理学分野 
2鳥取大学耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野

Neural control of the arterial blood pressure during head down tilt in rabbits

Satoshi Matsuo1, Yosuke Nakamura2, Masae Hosogai1, Yasuaki Kawai1

1Division of Adaptation Physiology and 2Otolaryngology, Faculty of Medicine, Tottori University, 86 Nishi-cho, Yonago 683-8503, Japan

微小重力環境下の体液の頭方移動を地上でシュミレーションするためにHead-down tilt (HDT)試験が行われている。HDT中の循環動態に対する神経性調節機構を明らかにするために,ウレタン麻酔下のウサギで45° HDT負荷を行い,動脈圧,腎交感神経活動,減圧神経活動を記録した。その結果,HDT負荷開始直後に腎交感神経活動の一過性の低下がおこり,次に減圧神経活動が上昇した。その後平均動脈圧が低下した。この結果から腎交感神経活動の低下は,圧受容器反射より速いメカニズムにより生じていることが示唆された。次に前庭を破壊したウサギでHDT負荷を行うと,対照群でみられた体位変換中の腎交感神経活動の低下は認められなかった。これよりHDTにおける前庭入力の変化が一過性に交感神経活動を抑制する可能性が示唆された。