宇宙航空環境医学 Vol. 43, No. 4, 2006

一般演題

39. 当空港クリニックにおけるBody Packersの現状と画像診断

牧野 俊郎1,浅野 悦洋1,飯島 勝利1,村越 秀光1,恵志 正輝1,岡田 進2,市川 和雄2
隈崎 達夫2,益子 邦洋3,山本 保博3

1日本医科大学成田国際空港クリニック
2日本医科大学 放射線医学講座
3日本医科大学 救急医療講座

Assessment and Diagnostic Imaging of Body Packers in Narita Airport Clinic

Makino, T. Asano, Y. Iijima, K. Murakoshi, H. Eshi, M. Okada, S. Ichikawa, K.
Kumazaki, T. Masiko, K. Yamamoto, Y

1Nippon Medical School Narita International Airport Clinic
2Nippon Medical School Department of Radiology
3Nippon Medical School Department of Emergency & Critical Care Medicine

【緒言】 近年,世界各国の国際空港や港湾などにおいて,麻薬の密輸は後を絶たず,その手段,方法も年々巧妙化しており,多岐にわたっているのが現状である。1970年代初めより欧米では,麻薬や大麻などの薬物をコンドームやセロファン製のラップで包み,それを大量に飲み込むことによって密輸を行うBody Packersの存在が注目されてきた。当空港クリニックにおいて同疑いで来院した症例について,これまでの現状と薬物画像診断の特性について検討したので報告する。
 【研究対象,方法】 当空港クリニック開設以来,13年4ヶ月の症例総数200,274例中,Body Packers疑い例1,208例(0.6%)を対象に考察した。
 【結果】 確認された薬物は115例(0.06%)延べ121種類で,大麻91例(75.2%),ヘロイン,アヘン各8例(6.6%),コカイン7例(5.8%),MDMA3例(2.5%),LSD2例(1.7%),覚醒剤2例(1.7%)だった。
 一症例での薬物の重量は2.72〜1,732.74 gだった。Body Packers 115例は,外国人70例(60.9%),日本人45例(39.1%),男女比104 : 11(外国人66 : 4,日本人38 : 7)で年齢は20〜55歳,平均31.5±7.5歳だった。薬物package1個あたりの大きさは約3×2×2 cmで,形状は円柱状もしくは筒状,重量は約10 gだった。ラッピングの素材はコンドーム,サランラップ,ゴム風船などさまざまだった。画像所見では,大麻,コカインは腹部単純X線および腹部CT検査において,境界明瞭,内部均一な,軟部陰影として描出され,周囲は線状のair densityで囲まれていた。しかしヘロインでは大麻やコカインと異なり両画像検査で内部不均一,糞塊に類似しており,部位によっては同定が難しい結果となった。
 【考察】 腹部単純X線検査および腹部CT検査などの画像診断では,大麻,コカインは同定が比較的容易だったが,ヘロインの同定は両検査において,難しかった。また,Body Packers疑い例にたいしては,腹部単純X線検査を第一に行い,不明瞭な場合には腹部CT検査を施行すべきと考えられた。