宇宙航空環境医学 Vol. 43, No. 4, 2006

一般演題

7. IL-6レセプター阻害剤(MR16-1)によるmdxマウス骨格筋への影響

寺田 昌弘1,松岡 由和1,河野 倫史2,王 暁東2,藍 勇波2,肥後 葉子3,大平 充宣1,2

1大阪大学生命機能研究科
2大阪大学医学系研究科
3大阪大学理学部

The effects of the interleukin-6 receptor inhibition on the skeletal muscle of mdx mice

Masahiro Terada1, Yoshikazu Matsuoka1, Fuminori Kawano2, Xian Dong Wang2, Yongbo Lan2,
Yoko Higo3, Yoshinobu Ohira1,2

1Graduate School of Frontier Biosciences, Osaka University
2Graduate School of Medicine, Osaka University
3School of science, Osaka University

Interleukin-6 (IL-6) は生体内で様々な作用をしているが,IL-6レセプター阻害により,骨粗鬆症やリウマチ等の自己免疫疾患が劇的に改善されるという報告がある。また我々の研究室では,C2C12マウス筋芽細胞株においてマウスIL-6レセプター阻害剤であるMR16-1を添加するとミオシン重鎖等のタンパク発現が増加し,筋分化が促進されるという結果も得ている。そこで筋崩壊/再生機構が活発なmdxマウスにおいてIL-6レセプター阻害が筋再生に有効ではないかと考え本実験を行った。5週齢のmdxマウスにMR16-1を腹腔内投与した (1 mg/10 g体重)。対照群にはphosphate-buffered saline (PBS)またはIgGを同量投与した。2週間後,両後肢からヒラメ筋を摘出し全筋横断面における分析をした。その結果,全筋線維数,筋横断面積,中心核を持った筋線維の割合,幼若型ミオシン重鎖発現には,MR-16-1,PBS,IgG群間に有意差は生じなかった。一方,MR16-1,PBS,IgGをヒラメ筋に筋注した場合では,腹腔内投与と同様,全筋線維数,筋横断面積,中心核を持った筋線維の割合には,有意な差はなかったが,幼若型ミオシン重鎖発現は,MR16-1投与群では増加する傾向にあった。以上のことから,抗重力筋においてIL-6レセプター阻害は筋再生を促進する可能性はあるが,今後更に詳しく調べる必要がある。また,今後,抗重力筋活動抑制中の筋におけるMR16-1投与の効果を追求する予定である。