宇宙航空環境医学 Vol. 43, No. 4, 2006

一般演題

3.　胎児に対する重力の影響を検討する試み

阿部　詩織^1a，三木　猛生²，上条　かほり^1d，伊東　千香^1a，酒井　百世^1b，浜　正子^1c，吉川　文彦^1d，山崎　将生³，挟間　章博³，清水　強^4,5，根津　八紘^1d

¹諏訪マタニティークリニック　放射線部^a，検査部^b，看護部^c，産科・婦人科^d
2北里大・医・衛生公衆衛生
³福島県立医大・医・第一生理
⁴諏訪マタニティークリニック附属清水宇宙生理学研究所
⁵福島県立医大（名誉教授）

An investigation of the effect of gravity on the fetus

Shiori Abe¹, Takeo Miki², Kahori Kamijyou¹, Chika Itou¹, Momoyo Sakai¹, Masako Hama¹, Fumiyoshi Yoshikawa¹, Masao Yamazaki³, Akihiro Kazama³, Tsuyoshi Shimizu^4,5, Yahiro Netsu¹

¹Suwa Maternity Clinic, 112-13 Yagi, Shimosuwa-machi, Nagano, 393-0077, Japan
²School of Medicine, Kitasato University, 1-15-1 Kitasato, Sagamihara, Kanagawa 228-8555
³Department of Physiology, Fukushima Medical University School of Medicine,1 Hikari-ga-oka, Fukushima 960-1295, Japan
⁴Shimizu Institute of Space Physiology, Suwa Maternity Clinic
⁵Professor Emeritus of Fukushima Medical University

【はじめに】　人類の宇宙への進出が拡大していく中で，微小重力環境での妊娠・出産は将来必要不可欠な問題となるであろう。しかし，地球上において重力が妊娠・出産へどう影響しているのかということ自体未だ解明されてはいない。その解明のための第一歩として，母体の体位変換に伴う胎児の動きの解析を試みた。
　【目的】　胎児への重力の影響を地上で観察研究し，微小重力下での人類の妊娠・出産を含む継世代に関わる生体現象を予測する。
　【方法】　対象は胎児を全身像でとらえることが可能な妊娠12週〜14週の母子共に健康である妊婦とその胎児とした。3D超音波検査装置（VOLUSON730 Expert）を用いて動画像を3次元で記録し，その画像から2D動画解析ソフトを使って胎児の正面，側面および頭頂方向から子宮壁と胎児における任意の直線を仮定し，両直線のなす相対角度の継時的変化を解析した。母体の体位変換には回転台としてX線透視台を利用した。
　【結果】　被験者6名で，計22回の計測を行い，解析可能な12例（立位から臥位，臥位から立位各6例）について検討した結果，母体の体位変換に伴い胎児と子宮壁との関係は様々に変動することがわかった。また，胎児は重力方向に対して変換前の体位に近い位置になるような傾向もあった。
　【まとめ】　子宮壁の動きと胎児の位置関係を3次元で継時的かつ定量的にとらえ得た。妊娠12〜14週の胎児は羊水内で様々な動きをしているが，母体の体位変換に対してはある程度独立した動きをとることが考えられる。