宇宙航空環境医学 Vol. 42, No. 4, 2005

座長コメント(一般演題)

セッション3: No. 15-17

座長: 伊藤 八次

15. 乗車中のTV注視による車酔い不快感の増加
 乗車中の車酔いがTV注視により影響される程度を,通常の乗車条件,TV視聴,読書の3条件で比較検討した報告である。実車実験である点で興味深い。結果はTV視聴により車酔い不快感が通常乗車の2倍に増加したが,読書に比べると2割減であった。TV視聴と読書の酔いの差について,乗車中の頭部傾斜角の差が前庭刺激に差を生じたためか質問があった。可能性はあるが推測の域を出ないという回答であった。TV視聴と読書の頭位を逆にした実験や頭部傾斜角を変化させた追加実験が期待される。
16. ヴァーチャル視覚刺激歩行のアフターエフェクト
 眼前の景色が一方向へ偏倚していくヴァーチャル視覚刺激を負荷してトレッドミル上を歩行。その後,経時的に足踏み検査を施行し動的体平衡への影響を検討した報告である。影響の最大値が刺激直後でなかったこと,重心動揺による静的体平衡評価による同種の実験報告よりも影響が長時間であることなどから,本実験におけるアフターエフェクトのメカニズムを考えると興味深い。
17. 眼鏡の不適矯正によって発現したと思われるめまい症例
 新しい眼鏡装用によりめまい感を生じることはめずらしくない。岡田らはこの現象を眼振記録と頭位の変化という客観的なデータを示すことで詳細な症例報告を行った。呈示症例は新しい眼鏡装用時に数日間の睡眠不足と過労という視力矯正以外の要因もあった点で純粋に矯正のみの影響か疑問が残る。しかし,この点については日をあらためて矯正によるめまい,眼振発現を確認したとのことである。視力矯正という身近な問題の重要性を再認識させる報告であった。