宇宙航空環境医学 Vol. 42, No. 4, 2005

座長コメント(一般演題)

セッション3: No. 13-17

座長: 井須 尚紀,伊藤 八次

本セッションでは,視覚によって誘導される空間識や動揺病・めまい等に関連した5演題が発表された。
 奈良県立医科大学の和田憲昭氏らは,静的および動的視覚外乱に対する修正能力を,弓道選手群とコントロール群で比較した。視覚にずれを生じるプリズム眼鏡を装着させて正面指標の指差し動作を繰返し行わせると,弓道選手群が少ない回数で誤差を小さくする結果が得られた。弓道のトレーニングによって空間把握の能力が向上したためと考察された。実験は正立位で行われたが,弓道では体幹を左側前方にし頭部を左側転した姿勢をとるので,弓道の姿勢での空間認識を測定することが望ましいと指摘された。弓道と空間把握能力との因果関係を明確にし,空間識向上のメカニズムを明らかにすることが望まれる。
 岐阜大学の青木光広氏らは,正弦波回旋性視運動刺激を与えて動揺病を誘起し,身体動揺や自律神経反応を測定した。心拍変動性周波数解析により,心臓交感・副交感神経活動を計測したところ,動揺病高感受性群で交感神経活動の亢進が観察された。この変化は動揺病初期あるいは動揺病自覚に先立つ反応であった。動揺病の発症に伴うあるいは先行する特異的反応であるのか否か,動揺病感受性との因果関係や定量的関係を明らかにすることが今後の課題と思われる。