宇宙航空環境医学 Vol. 42, No. 4, 2005

一般演題抄録

41. 感覚神経がラットヒラメ筋における細胞内シグナル伝達に及ぼす影響

河野 史倫1,松岡 由和2,寺田 昌弘1,肥後 葉子3,王 暁東1,大平 充宣1,2

1大阪大学医学系研究科
2大阪大学生命機能研究科
3大阪大学理学部

Role of sensory input in intramuscular signaling pathway of rat soleus muscle

Fuminori Kawano1, Yoshikazu Matsuoka2, Masahiro Terada1, Yoko Higo3, Xiao Dong Wang1,
and Yoshinobu Ohira1,2

1Graduate School of Medicine
2Graduate School of Frontier Biosciences
3School of sciences, Osaka University

12週齢のウィスター系雄ラットをコントロール群,過負荷群(FO),後肢懸垂(U)群,感覚神経切除群(DA),FO+DA群に分け,FO群では足底筋と腓腹筋の末梢部腱を切除し,U群には連続尾部懸垂を施した。DA群では第4および5腰椎における後根神経を切除した。2週間後ヒラメ筋を摘出し凍結した。これらの筋の半分は低カルシウム筋弛緩液中で解凍し,単一筋線維を引き抜き核小体の銀染色およびヘマトキシリンによる核染色を施し,筋核横断面積および核小体数の測定に用いた。残りの半分は,モジナイズ後細胞質分画タンパク質を抽出し,ウェスタンブロット法を用いてリボソームタンパク質S6(S6),27 kDa熱ショックタンパク質(HSP27)のリン酸化レベルを定量した。
 その結果,UおよびFO+DA群で有意な筋核サイズの増大が認められた。また,FOおよびFO+DA群において単一筋核あたりの核小体数の増加が認められた。UまたはDAは,核小体数には影響しなかった。おそらく核小体数の増加は,筋における張力発揮の増大に依存して引き起こされた現象であると考えられる。また,FO群ではS6やHSP27のリン酸化が促進されたが,UおよびDA群では抑制された。しかし,Uによるリン酸化抑制の程度は,DA群で見られたものよりも有意に大きいものであった。FO+DA群では,コントロールレベルから変化は認められなかった。これらの結果から,骨格筋における張力発揮そのものとそれによって生じる筋感覚神経活動の両方がS6やHSP27のリン酸化に関与したことが示唆された。