宇宙航空環境医学 Vol. 42, No. 4, 2005

一般演題抄録

26. 音楽ソフト(YAMAHA-Sol2)による聴覚心理学用刺激和音の作成

松波 謙一

中部学院大学人間福祉学部

An easy method to make any harmonic sound stimulation for psychological study by using a soft-synthesizer Sol2 (YAMAHA)

Kenichi Matsunami

School of Human Welfare, Chubu-Gakuin University

【研究の目的】 音楽心理学,神経心理学等の聴覚実験においては刺激音の作成が重要である。本研究では音(楽)刺激を,コンピュータソフトを使って作成することを試みた。今回は,ソフト・シンセサイザーのSol2 (YAMAHA)を使用した。これにより,従来,非常に困難であった不協和音等の合成が極めて容易に出来ることを発見した。例えば,三和音ドミソ(CEG)の第三音(E)を10セントずつ,上昇または下降させることを行った。ちなみに,平均律の半音の間隔は100セント,1オクターヴは1,200セントである。
 【方法と手順】 音楽ソフトSol2 (YAMAHA)をパソコンにインストールし,以下の手順に従い,E音を10セントずつ変えていった。(1) Sol2を使い,スタッフ・ウインドウを開き,ドミソ(CEG)の各音を一音ずつ,各トラックに書き込む(全音符で三小節)。今回はピアノ音にした(他の楽器音への変換は極めて容易)。(2) これを10組作る。しかる後,第二組のE音を10セント,第三組のE音を20セント,第四組のE音を30セントと,以下,100セントまで変化させた和音の組を作る。(3) 上記のピッチ(音程)を変化させるには,Sol2のPitch Bent(ピッチベント)の手法を用いた。この方法は,本来はクラリネットの “しゃくりあげ” の音色を出すためのものだが,“しゃくりあげ” を行わず,単純にピッチだけを僅かに(例えば,10セント)変える事が出来ることを発見した。これにより,普通では作ることが困難な和音を簡単に作ることが出来た。
 【結果】 パソコンで,Sol2なりWindow Media Player (WMP)で和音を再生すればよい。WMPを使う場合には,MIDIからWAVEにファイル変換をする必要がある。通常,E音が20セントか30セント変わると,和音ドミソがドミソとは変わったと認知される。会場でデモをするので,聞いて確かめてもらう所存である。
 【結論と考察】 Sol2のピッチベントの手法を使うことにより,和音ドミソのE音を10セントずつ容易に変えることが出来た。従来までは,発振器からサイン波の周波数を少しずつ変え,テープに記録し加算するという,高度な技術を要する面倒な手続きが必要だったが,それがいとも簡単に出来た。これがDTM手法の大きなメリットの一つであろう。