宇宙航空環境医学 Vol. 42, No. 4, 2005

一般演題抄録

21. 簡易型空間識失調シミュレータ作製の試み(第二報)

原田 広行1,三浦 靖彦1,喜久生隆太2,原  志野1,福本 正勝1,津久井一平1

1(財) 航空医学研究センター
2日本航空機操縦士協会

Development of portable spatial-disorientation simulator Part 2

Hiroyuki Harada1, Yasuhiko Miura1, Ryuta Kikuike2, Shino Hara1, Masakatsu Fukumoto1, Ippei Tsukui1

1Japan Aeromedical Research Center
2Japan Aircraft Pilot Association

【目的】 有視界飛行を主とする小型機操縦士を対象に,視覚錯覚による空間識失調を容易に体験できるシナリオを考案し,シミュレータとして完成させた。なお,作成に当たっては現に空間識失調を体験した操縦士の助言を採用した。
 【体験方法】 有視界飛行を行う場合,操縦士には水平線や地平線を視標として機体姿勢を水平に保とうとする特性がある。そこで,この特性に影響を与えやすい木漏れ日,雲海傾斜,漁り火の3つのモードについて,あるタイミングでこれらのオブジェクトに変化を与えることにより,空間識失調を誘発しこれを体験させる。また,ニアミスモードについては,いわゆるコリジョンコースに陥る可能性が生じたとき,相手方機の機影の見え方及び対処方法を体験させる。
 【結果】 実際にフライトしている操縦士で,かつ,空間識失調経験者の意見を採り入れたことにより,臨場感のある複数のシナリオが作成出来た。また,ニアミスモードについては,被験者全員からその有用性を高く評価された。
 【結論】 この簡易型空間識失調シミュレータの体験会を定期的に開催することにより,特に,小型機操縦士に対する教育・普及活動として航空の安全に寄与したいと考えている。