宇宙航空環境医学 Vol. 42, No. 4, 2005

一般演題抄録

18. めまいと生活習慣

関根 基樹,高橋 正紘

東海大学医学部耳鼻咽喉科

Vertigo and lifestyle

Motoki Sekine, Masahiro Takahashi

Department of Otolaryngology, Tokai University School of Medicine

【目的】 最近,良性発作性頭位めまい症(BPPV)の患者が激増しており,めまい外来患者の半数近くを占めている。BPPVは脱落した耳石が病因であることから,近年治療として,脱落した耳石を頭位変化により卵形嚢内に移動させる理学換法が多くの施設で行われている。これら理学療法に関する報告は多いが,症状発現と生活習慣の関わりを検討した報告はほとんどない。今回我々は,BPPV患者に一定の生活習慣傾向が見られやすいことに着目し,診察時にその生活習慣を是正するよう指導した。その後,郵送アンケートにより,めまいが起こる前の生活習慣や,生活指導後のめまい経過を調査した。
 【対象と方法】 対象は2003年1月から2004年11月までの1年10ヶ月間に,当科めまい外来でBPPVと診断した患者のうち,生活指導に重点をおいて経過をみた患者186名で,122名(65.6%)から回答を得た。調査内容は,性,年齢,職業,誘発動作(多肢選択),低頭位姿勢や動作の習慣(多肢選択),習慣変更による症状改善の有無,その他である。
 【結果】 調査結果は,1) 50−70代に多発,2) 職業別では主婦が最多,3) 高頻度の姿勢動作: 横になってテレビを見る54名(44%),前屈作業42名(34%),低い枕使用35名(28%),右下や左下の同一姿勢で眠る34名(28%),草むしり21名(17%)などであった。
 【考察とまとめ】 前屈みになったり,枕が低かったり,草むしりや,上を仰ぎ見たりといった,頭を低い位置にする姿勢や,横になってテレビを見たり,右下又は左下の同一の姿勢で寝たりといった,同じ頭位を保持する姿勢をとる人が多かった。これらの生活習慣が,BPPVの背景になっているとすると,BPPVは生活習慣病の一つといえる。近年低い枕が流行していることや,個室とベッドの普及により,横になってテレビを見る人が増えていることなどが,BPPV患者増加の要因になっていると考えられる。