宇宙航空環境医学 Vol. 42, No. 4, 2005

一般演題抄録

12.　低圧・低酸素下における角膜矯正手術（LASIK）の視機能への影響

福本　正勝¹，三浦　靖彦¹，原　　志野¹，原田　広行¹，津久井一平¹，柴　　琢也²，三戸岡克哉²，
大野　建治²，北原　健二²

¹(財) 航空医学研究センター
²東京慈恵会医科大学　眼科学講座

Influence of post LASIK patient's visual performance under low pressure and low oxygen

Masakatsu Fukumoto¹, Yasuhiko Miura¹, Shino Hara¹, Hiroyuki Harada¹, Ippei Tsukui¹, Takuya Shiba², Katsuya Mitooka², Kenji Ohno², Kenji Kitahara²

¹Japan Aeromedical Research Center
²Department of Ophthalmology, The Jikei University School of Medicine

【背景】　1989年以来，Laser in situ keratomileusis (以下LASIK）は，その効果が評価され，急速に普及した。米国では矯正視力が良好なLASIK後患者について，航空身体検査上適合の取扱いがなされている。
　【目的】　LASIK後患者における，気圧や酸素濃度の変化による視機能についての報告は極めて少ない。そこで，今回我々は低圧・低酸素下でのLASIK後患者の視機能について検討を行った。
　【対象】　LASIK後の健康成人5例10眼 (LASIK群）及び4例8眼（屈折異常所見のみ，対照群）。
　【方法】　航空医学実験隊の協力の下，航空自衛隊立川分駐屯地内の低圧室を使用した。航空機内を模した低圧 (0.7気圧，1万ft相当)・低酸素環境下と地上において，減圧前（通常圧期)・減圧後（減圧期)・減圧終了後（通常圧期)の3回，次の項目を計測し比較検討した。1. 遠方・中距離・近方視力，2. 屈折値・ケラト値，3. 眼圧，4. 角膜形状解析，5. 調節近点距離，6. コントラスト感度，7. 前眼部所見，8. 眼底所見，9. 瞼裂幅，10. 瞳孔径，11. 眼位，12. 眼球運動
　【結果及び考察】　今回の実験では，LASIK群で，眼圧の変化にのみ有意差が認められた。他の項目については，両群とも有意な変化を認めなかった。眼圧については機器などによる測定の限界が考えられ，視機能について問題がないことから，低圧・低酸素環境下のLASIK群の視機能への影響は問題のない範囲と考えられた。
　【結論】　低圧・低酸素環境を模した今回の実験では，LASIK群，対照群ともに明らかな視機能の低下を認めなかった。
　【謝辞】　ご協力いただいた航空医学実験隊の皆様に深謝します。