宇宙航空環境医学 Vol. 42, No. 4, 2005

一般演題抄録

1. 成田空港と救急医療

牧野 俊郎1,浅野 悦洋1,村越 秀光1,恵志 正輝1,畑  典武2,益子 邦洋2

1日本医科大学成田国際空港クリニック
2日本医科大学付属千葉北総病院

Narita airport and emergency medical care

Toshiro Makino1, Yoshihiro Asano1, Hidemitsu Murakoshi1, Masateru Eshi1, Noritake Hata2,
Kunihiro Mashiko2

1Nippon Medical School Narita International Airport Clinic
2Nippon Medical School Chiba Hokuso Hospital

【緒言】 成田国際空港(成田空港)開港より28年が経過する。当空港クリニックは,成田空港第2旅客ターミナルビル地下1階に開設され,まもなく14年目を迎える。これまで12年4ヶ月の当空港クリニックで経験した救急症例を分析し,考察する。
 【研究対象・方法】 症例総数184,256例のうち救急症例5,746例(3.1%)を対象に,重症度,疾患分類を含めたさまざまな因子について検討した。
 【結果】 救急症例の男女比は,2,624例(45.7%),3,122例(54.3%)で女性に多かった。平均年齢は39.9±18.1歳(Mean±SD)だった。重篤例は,85例(1.5%),平均年齢57.5±16.2歳,以下同様に重症例495例(8.7%),48.8±17.4歳,中等症例3,644例(54.8%)38.4±18.1歳,軽症例2,008例(35.0%),39.3±19.2歳だった。疾患別では急性腹症が1,582例(27.5%)と最も多く,次いで外傷834例(14.5%),呼吸器疾患686例(11.9%),感染症431例(7.5%)で,以下,循環器疾患337例(5.9%),脳血管障害252例(4.4%),肝腎疾患113例(2.0%),血管疾患108例(1.9%)と続いた。また,航空機に起因すると考えられる旅行者血栓症(肺血栓塞栓症,PTE)は101例(0.05%)だった。同確定診断例は65例(64.4%),男女比22:43,平均年齢60.8±12.3歳だった。同疑い例は36例(35.6%),男女比18:18,平均年齢51.1±13.7歳だった。死亡例は25例(24.8%)で,確定診断例24例(23.8%),男女比11:13,平均年齢61.2±13.3歳,同疑い例1例(1.0%)で,80歳米国人男性だった。
 【考察】 当空港クリニックでは,国際空港という特殊な環境下におかれているため,常に臨機応変な対応が必要である。また,快適な旅行をするために,しっかりとした体調管理が重要であると考えられた。