症例報告

細胞内脂肪滴が特徴的であった甲状腺篩状モルラ癌の1例

力武美保子¹　　　岩田　　亨²

（¹長崎労災病院病理診断科，²同　外科）

要旨: 細胞内脂肪滴が特徴的であった甲状腺篩状モルラ癌の1例について報告する。20代女性。甲状腺右葉の境界明瞭な充実嚢胞性腫瘍であった。組織学的に充実性増殖が主体で，β-cateninが核，細胞質に陽性であった。モルラ形成や豊富な細胞内脂肪滴を有する腫瘍細胞が特徴的で診断の一助となり得る所見であった。家族性大腸腺腫症の家族歴はなく散発例と考えられた。また充実性増殖を示すが壊死・核分裂像・広範な浸潤性増殖は認めず，high-grade tumorではないと考えた。組織学的所見と文献的考察を加え報告する。

キーワード:thyroid, cribriform morular thyroid carcinoma, lipid-rich, solid growth

A case of cribriform morula thyroid carcinoma with lipid rich cells

Mihoko Yamamoto-Rikitake¹, and Toru Iwata²

Departments of ¹pathology and ²Surgery, Nagasaki Rosai Hospital

（論文受付:2023年 7月13日）

（採用決定:2023年11月21日）