症例報告

多列線毛上皮および重層扁平上皮からなる回腸重複腸管の1例

森井　大智　　　田原紳一郎　　　森井　英一

（大阪大学大学院医学系研究科病態病理学講座）

要旨: 回腸末端の嚢胞を前腸由来の上皮で被覆された回腸重複腸管と診断した1例を報告する。症例は64歳女性。盲腸癌に対する術前精査で骨盤内に嚢胞を認めた。術中に回腸末端の嚢胞性病変と判明し，盲腸癌とともに摘出された。肉眼所見では，漿膜側に突出する鶏卵大の嚢胞を確認できた。組織学的には嚢胞壁は多列線毛上皮と重層扁平上皮で裏装され，明瞭な腸管上皮は認めなかった。また嚢胞壁には平滑筋層がみられ，一部は回腸固有筋層に連続していた。嚢胞は回腸重複腸管と診断した。嚢胞を被覆する上皮は胎生期の前腸由来と判断した。

キーワード:ileum, duplication cyst, pseudostratified ciliated epithelium, squamous epithelium

A case of ileal duplication composed of pseudostratified ciliated epithelium and stratified squamous epithelium

Daichi Morii, Shinichiro Tahara, and Eiichi Morii

Department of Pathology, Osaka University Graduate School of Medicine

（論文受付:2023年 5月17日）

（採用決定:2023年 9月20日）