症例報告

術前診断に苦慮した淡明細胞が目立つ小児肺原発粘表皮癌の1例

今川奈央子　　　神保　直江　　　塚本　龍子
須广　佑介　　　猪原　千愛　　　古澤　哲嗣
吉田　美帆　　　伊藤　智雄

（神戸大学医学部附属病院病理診断科）

要旨: 肺粘表皮癌は粘液細胞，中間細胞，類表皮細胞から構成されるが，症例により細胞割合や構築が異なり診断が難しい。術前診断に苦慮した小児肺粘表皮癌を経験したので報告する。症例は7歳女性。肺炎契機に左肺上葉気管支内腫瘍を指摘され，生検で唾液腺型腫瘍を疑ったが，淡明細胞が目立ち，診断困難であった。手術材料においても診断に苦慮したが，MAML2転座が確認でき淡明細胞亜型の粘表皮癌と診断した。粘表皮癌に特異的な免疫染色マーカーはなく，CRTC1/3::MAML2転座が特異的かつ高頻度にみられることから，診断困難例において，MAML2 FISHが有用である。

キーワード:pulmonary, mucoepidermoid carcinoma, MAML2, FISH

A case of pulmonary mucoepidermoid carcinoma in a childhood with prominent clear cells:Diagnostic challenge in preoperative samples

Naoko Imagawa, Naoe Jimbo, Ryuko Tsukamoto, Yusuke Suma, Chiaki Inohara, Satoshi Furuzawa, Miho Yoshida, and Tomoo Itoh

Department of Diagnostic Pathology, Kobe University Hospital

（論文受付:2023年1月26日）

（採用決定:2023年4月22日）