症例報告

オンコサイト化生主体の粘表皮癌の1例

川村　和弘¹　　西田　陽登¹　　近藤　嘉彦¹
草場　敬浩¹　　小山　雄三¹　　森山　宗仁²
平野　　隆²　　駄阿　　勉¹

（¹大分大学医学部診断病理学講座，²同　耳鼻咽喉科・頭頚部外科）

要旨: 症例は55歳，女性。右耳下腺浅葉の結節性病変に対し，右耳下腺腫瘍切除術が施行された。組織学的に腫瘍細胞は豊富な好酸性細胞質を有し，壊死や神経周囲浸潤がみられた。腫瘍を全割し標本を作成したが，粘液細胞はごく少数であった。免疫染色ではp63がびまん性に陽性，抗ミトコンドリア抗体陽性であった。RT-PCR法でCRTC1-MAML2の融合遺伝子が検出され，粘表皮癌の診断に至った。オンコサイト化生主体の唾液腺腫瘍では，典型的な腫瘍像の検索が重要であり，また融合遺伝子検出も有用である。

キーワード:Parotid gland, mucoepidermoid carcinoma, oncocyte, CRTC1-MAML2

A case of mucoepidermoid carcinoma in which oncocytic cells dominate

Kazuhiro Kawamura¹, Haruto Nishida¹, Yoshihiko Kondo¹, Takahiro Kusa2, and Tsutomu Daa¹

¹Departments of Diagnostic pathology, and ²Otolaryngology Head and Neck Surgery, Oita University Faculty of Medicine

（論文受付:2023年1月27日）

（採用決定:2023年2月18日）