症例報告

前縦隔腫瘍との鑑別を要した限局性中皮腫の1例

尾形　博子¹　　渡邊　裕文¹　　佐藤　聡子¹
大石　　久²　　藤島　史喜¹　　一迫　　玲³
鈴木　　貴¹

（¹東北大学病院病理部，²東北大学加齢医学研究所呼吸器外科学分野，
³東北大学病院造血器病理学共同研究部門）

要旨: 前縦隔腫瘍との鑑別を要した限局性中皮腫の一例を報告する。症例は69歳男性，検診で縦隔拡大を指摘された。生検で胸腺腫やホジキンリンパ腫が鑑別となったが，免疫組織化学の結果より肉腫型中皮腫が推定された。臨床的には胸腺腫が疑われたため切除術が施行された。灰白色の境界明瞭な多結節性腫瘤で，組織学的に乳頭状構造を伴う上皮様領域と紡錘形細胞を含む肉腫様領域が認められ，限局性中皮腫（二相型中皮腫）と診断した。縦隔に病変の主座がある限局性中皮腫は極めて稀であり，縦隔腫瘍の鑑別に挙げるべき重要な疾患と考えられる。

キーワード:mediastinum, mesothelioma, localized, histopathology

A case of localized mesothelioma mimicking an anterior mediastinal tumor

Hiroko Ogata¹, Hirofumi Watanabe¹, Satoko Sato¹, Hisashi Oishi², Fumiyoshi Fujishima¹, Ryo Ichinohasama³, and Takashi Suzuki¹

¹Department of pathology, Tohoku University Hospital
²Department of Thoracic Surgery, Institute of Development, Aging and Cancer, Tohoku University
³Division of hematopathology, Tohoku University Hospital

（論文受付:2022年11月13日）

（採用決定:2023年1月28日）