総　　説

脳腫瘍の診断に必要な遺伝子異常:実践と課題

増井　憲太¹　　小森　隆司²

（¹東京女子医科大学病理学講座，²東京都立神経病院検査科）

要旨: 中枢神経系腫瘍の新WHO分類（2021分類/第5版）が発刊され，形態学に基づく古典的な病理組織診断は，分子情報を組み合わせた「統合診断」による多層的アプローチに取って代わられつつある。これは日常臨床に大きな混乱をもたらす一方，分子遺伝学的な所見を上手く取り入れる事で，精度が高い個別化医療へと繋げる事ができる。本稿では，新WHO分類における各脳腫瘍の診断プロセスについて概説すると同時に，脳腫瘍患者の精密医療へ向けた，“明日からの診療で実践可能”な遺伝子異常の評価法に焦点を当てる。

キーワード:WHO2021/5^th, integrated diagnosis, diffuse gliomas, molecular genetic testing, methylome profiling

Molecular diagnostic approaches for brain tumors based on updated WHO 2021 classification

Kenta Masui¹, and Takashi Komori²

¹Department of Pathology, Tokyo Women’s Medical University
²Department of Laboratory Medicine and Pathology, Tokyo Metropolitan Neurological Hospital

（論文受付:2022年12月27日）

（採用決定:2023年2月6日）