症例報告

胸部大動脈瘤を呈した巨細胞性動脈炎の1例

田崎　貴嗣¹　　　霧島　茉莉¹　　　北薗　育美^1,2
田畑　和宏¹　　　東　美智代^1,2　　 安村　拓人³
豊川　建二³　　　谷本　昭英¹

（¹鹿児島大学大学院医歯学総合研究科　病理学分野，
²鹿児島大学病院　病理部・病理診断科，
³鹿児島大学大学院医歯学総合研究科　心臓血管外科学分野）

要旨: 症例は80代女性。リウマチ性多発筋痛症の治療中に胸部大動脈瘤を指摘され，人工血管置換術が行われた。大動脈では内膜に軽度の粥状硬化を認めた。中膜ではリンパ球や形質細胞，少数の多核巨細胞の浸潤，内膜側優位の弾性線維の配列の乱れと消失を認めたが，外膜の線維化や炎症細胞浸潤は軽度であり，巨細胞性動脈炎と診断した。大動脈瘤において巨細胞性動脈炎と病理診断される症例では，側頭動脈炎の既往がなく臨床症状に乏しいことがあり，大動脈瘤を注意深く検索することで，巨細胞性動脈炎の可能性を見落とさないことが重要である。

キーワード:aorta, aneurysm, giant cell arteritis, temporal arteritis

Giant cell arteritis diagnosed by histological examination of aortic aneurysm

Takashi Tasaki¹, Mari Kirishima¹, Ikumi Kitazono^1,2, Kazuhiro Tabata¹, Michiyo Higashi^1,2, Hiroto Yasumura³, Kenji Toyokawa³, and Akihide Tanimoto¹

¹Department of Pathology, ³Department of Cardiovascular Surgery, Graduate School of Medical and Dental Sciences, Kagoshima university
²Department of Pathology, Kagoshima university hospital