総　　説

卵巣腫瘍の病理診断:基本と落とし穴

清川　貴子

（東京慈恵会医科大学　病理学講座・同附属病院病理部）

要旨: 病理医を志す若手医師と卵巣腫瘍の病理診断に苦手意識をもつ病理医を対象として，卵巣腫瘍の病理診断の基本と落とし穴について述べる。臨床情報の確認と肉眼所見の観察は，鑑別診断を絞り込み，適切な標本採取を行う点から正しい診断に不可欠である。上皮性腫瘍における良性・境界悪性・悪性の定義と頻度，組織学的異型度，機能性間質，子宮内膜症関連腫瘍という基本事項に加えて，悪性性索間質性腫瘍の代表である成人型顆粒膜細胞腫の診断のコツ，転移性腫瘍との鑑別点，術中迅速診断の落とし穴についても解説する。

キーワード:Ovary, tumor, diagnosis, pathology

Pathologic diagnosis of ovarian tumors:Diagnostic pearls and pitfalls

Takako Kiyokawa

Department of Pathology, The Jikei University School of Medicine

（論文受付:2022年10月6日）

（採用決定:2022年10月27日）