症例報告

粘液型副腎皮質癌との鑑別を要した，粘液変性を伴い偽腺管形成を呈する副腎皮質腺腫

大倉　航平¹　　　田中　一仁¹　　　南　　隆広²
渡邊紳一郎²　　　神尾多喜浩¹

（¹済生会熊本病院中央検査部病理診断科，²同　腎・泌尿器センター）

要旨: 粘液変性および偽腺管形成を呈した副腎皮質腺腫の1例を報告する。症例は40代，男性。左副腎に38 mm大の腫瘤性病変を指摘され，精査の結果，腹腔鏡下左副腎摘除術が施行された。組織学的には異型の軽度な腫瘍細胞が偽腺管状または索状，小胞巣状に増殖し，粘液性変化を伴っていた。豊富な粘液やcytokeratinの発現，副腎周囲脂肪組織への進展から，当初は粘液型副腎皮質癌と診断した。しかし，再検討により良悪性の鑑別が問題となり，副腎病理の専門家にコンサルテーションを行ったところ，粘液変性を伴い偽腺管形成を呈する副腎皮質腺腫の診断となった。良性の根拠として，Ki-67標識率が低値である点，type �W collagenの免疫染色では副腎皮質の構築を保持している点，被膜外進展はあるが被膜浸潤はみられない点，Weiss criteria項目を満たさない点などが挙げられた。

キーワード:Adrenal gland, Adrenocortical adenoma, Myxoid degeneration, Pseudoglandular formation, Myxoid adrenocortical carcinoma

Adrenocortical adenoma with myxoid degeneration and pseudoglandular formation requiring differentiation from myxoid adrenocortical carcinoma

Kohei Okura¹, Kazuhito Tanaka¹, Takahiro Minami², Sinichiro Watanabe², and Takihiro Kamio¹

Department of ¹Pathology and ²Nephrology & Urology, Saiseikai Kumamoto Hospital