症例報告

腹腔への広範な進展を示した胸膜原発悪性中皮腫の1剖検例

大島 康利1   石田  毅1   藤倉 睦生1
羽賀 敏博1   斉藤 光次1   関  順彦2
笹島ゆう子1

1帝京大学医学部病院病理部,2同 内科学講座)

要旨: 70代女性の右胸膜原発肉腫型悪性中皮腫の1剖検例。画像所見で腹腔内病変が優勢にみえたことから,主に腹腔内臓器原発腫瘍を鑑別対象とした原発不明がんとしての検索中に死亡となった。腫瘍は右肺上中葉付近の臓側胸膜を主座とし,横隔膜を越えて肝周囲を中心とする腹膜に広範に進展し,縦隔および左胸膜にも及んでいた。組織学的には,中皮細胞マーカー陽性を示す紡錘形細胞の増殖がみられた。病変全体を俯瞰することで原発部位を明らかにすることができ,病態解明の一手段としての病理解剖の重要性が改めて認識された。

キーワード:pleura, mesothelioma, autopsy


A case of diffuse sarcomatoid malignant pleural mesothelioma with massive abdominal invasion

Yasutoshi Oshima1, Tsuyoshi Ishida1, Mutsuo Fujikura1, Toshihiro Haga1, Koji Saito1, Nobuhiko Seki2, and Yuko Sasajima1

Departments of 1Diagnostic Pathology and 2Internal Medicine, Teikyo University Hospital

(論文受付:2022年 3月31日)

(採用決定:2022年 7月27日)