症例報告

皮膚後天性被角線維腫Acquired fibrokeratomaの1例

長谷川敦子¹　　　中澤　匡男¹　　　永坂　拓也¹
吉田　圭汰¹　　　郭　　　風¹　　　長田　篤祥²
竹内　正樹²

（¹東京女子医科大学附属八千代医療センター病理診断科，²同　形成外科）

要旨: 皮膚に発生した後天性被角線維腫の1例を報告する。本疾患は稀な皮膚良性腫瘍であるが，一見瘢痕組織と類似した組織像であり，診断には正しい疾患概念と組織所見の認識が必要と考えられた。症例は70歳男性で，約10年前に棘がささった左手中指DIP 関節腹側に病変が出現した。徐々に増大したため，皮膚腫瘍切除術が施行され，組織像から本疾患が想定された。表皮の角質増生・肥厚，真皮での太い膠原線維束の形成，毛細血管拡張・増生が観察され，後天性被角線維腫として典型とみなされた。中〜強拡大での組織所見は一見非特異的にみえ，診断に苦慮した。本疾患の病理診断には特徴的な肉眼形態に加え，弱拡大での組織所見が重要であると思われた。

キーワード:skin, acquired fibrokeratoma, sausage-like appearance, hyperkeratosis, acanthotic epidermis, thick collagen bundles

A case of acquired fibrokeratoma of the skin

Atsuko Hasegawa¹, Tadao Nakazawa¹, Takuya Nagasaka¹, Keita Yoshida¹, Feng Guo¹, Atsuyoshi Osada², and Masaki Takeuchi²

Departments of ¹Pathology and ²Plastic Surgery, Tokyo Women’s Medical University Yachiyo Medical Center （TYMC）

（論文受付:2022年 4月 1日）

（採用決定:2022年 6月17日）