総　　説

口腔扁平上皮癌と前駆病変の診断と評価

中野　敬介　　　長塚　　仁

（岡山大学学術研究院医歯薬学域口腔病理学分野）

要旨: 口腔領域の悪性腫瘍の大部分は口腔粘膜に生じる扁平上皮癌で，口腔の悪性腫瘍全体の90%以上を占める。口腔潜在的悪性疾患は癌へ進展する危険性を有する臨床的疾患概念で，しばしば病理組織学的な前癌病変を伴っている。口腔の上皮性異形成は，他の部位の上皮性異形成と区別され，口腔上皮性異形成として定義されている。口腔の上皮内癌はWHO分類に記載のある組織型以外にも口腔特有の組織型が存在している。本稿では口腔潜在的悪性疾患について概説し，口腔上皮性異形成および口腔扁平上皮癌の分類，診断と評価法について解説する。

キーワード:oral cavity, oral potentially malignant disorders, oral epithelial dysplasia, carcinoma in situ, oral squamous cell carcinomas

Diagnosis and evaluation of oral squamous cell carcinoma and its precursor lesions

Keisuke Nakano and Hitoshi Nagatsuka

Department of Oral Pathology and Medicine, Faculty of Medicine, Dentistry and Pharmaceutical Sciences, Okayama University

（論文受付:2022年 2月14日）

（採用決定:2022年 5月 7日）