症例報告

CRTC1-MAML2融合遺伝子を検出した石灰化を伴う舌下腺粘表皮癌の1例

奥村　　将^1,2　　　宇佐美　悠¹　　　廣瀬　勝俊¹
大家　香織³　　　福田　康雄³　　　小原　正治⁴
堀　由美子⁴　　　森井　英一⁴　　　豊澤　　悟¹

（¹大阪大学大学院歯学研究科口腔病理学教室，²同　口腔外科学第二教室，
³大阪大学歯学部附属病院検査部，⁴大阪大学大学院医学系研究科病態病理学）

要旨: 粘表皮癌は最も発生頻度の高い悪性唾液腺腫瘍であり，組織像のバリエーションも多彩である。そのなかでもとくに稀な，石灰化を伴う舌下腺原発粘表皮癌の1例について報告する。症例は67歳女性。数週間前より自覚していた左側舌下部の腫瘤を切除された。組織学的には，類円形腫大核と細顆粒状の淡好酸性胞体を有する細胞と，粘液細胞が，充実性あるいは嚢胞状構造を呈して増殖していた。嚢胞状構造の内腔には分泌物の貯留および石灰沈着がみられ，同心円状の砂粒体様石灰化物も観察された。非典型的な組織像であったが，遺伝子検索により，CRTC1-MAML2融合遺伝子を検出し，粘表皮癌と診断した。

キーワード:sublingual grand, mucoepidermoid carcinoma, calcification, psammoma body, CRTC1-MAML2 fusion gene

Sublingual mucoepidermoid carcinoma with calcifications confirmed by the CRTC1-MAML2 fusion gene:a case report

Masashi Okumura^1,2, Yu Usami¹, Katsutoshi Hirose¹, Kaori Oya³, Yasuo Fukuda³, Masaharu Kohara⁴, Yumiko Hori⁴, Eiichi Morii⁴, and Satoru Toyosawa¹

Departments of ¹Oral Pathology and ²Oral and Maxillofacial Surgery 2, Osaka University Graduate School of Dentistry
³Division for Clinical Laboratory, Osaka University Dental Hospital
⁴Department of Pathology, Osaka University Graduate School of Medicine

（論文受付:2022年 1月11日）

（採用決定:2022年 1月18日）