症例報告

膵原発が示唆された腹膜偽粘液腫の1剖検例

佐々木　文¹　　　橋本　和彦¹　　　村本　玄紀¹
小橋　優子²　　　財部紗基子³

（¹東京歯科大学市川総合病院臨床検査科病理，²同　放射線科，³3同　消化器内科）

要旨: 症例は原発不明癌，腹膜播種が疑われていた90代男性。誤嚥性肺炎を契機に全身状態が悪化し死亡した。病理解剖が施行された。剖検時，腹腔内はゼリー状の粘膜が貯留した腹膜偽粘液腫を呈しており，組織学的には粘液性腺癌の像を示した。虫垂をはじめとした消化管には病変を認めなかった。膵に膵管内乳頭状粘液性腫瘍（IPMN）を認め，膵腫瘍由来の可能性が疑われたが，上皮の形質が異なっており腹膜偽粘液腫の原発とは断定し得なかった。腹膜偽粘液腫と粘液産生性膵腫瘍の関係について，文献的考察を含めて報告する。

キーワード:Pseudomyxoma peritonei, Pancreas, Intraductal papillary mucinous neoplasm （IPMN）, Mucin

An autopsy case of pseudomyxoma peritonei suggestive of the pancreatic origin

Aya Sasaki¹, Kazuhiko Hashimoto¹, Hiroki Muramoto¹, Yuko Kobashi², and Sakiko Takarabe³

Departments of ¹Pathology and Laboratory Medicine, ²Radiology, and ³Gastroenterology, Ichikawa General Hospital, Tokyo Dental College

（論文受付:2021年 7月31日）

（採用決定:2021年12月20日）