症例報告

神経フェリチン症の肺病変:肺内フェリチン封入体と高度肺気腫を呈した1剖検報告

田中　玲子¹　　　澤住　知枝¹　　　木村　活生²
多田美紀子³　　　土井　　宏³　　　千葉佐和子⁴
大谷　方子¹　　　上田　直久²　　　田中　章景³
稲山　嘉明¹

（¹横浜市立大学附属市民総合医療センター病理診断科，²同　脳神経内科，
³横浜市立大学医学部神経内科学・脳卒中医学，⁴国立病院機構横浜医療センター病理診断科）

要旨: 神経フェリチン症は，フェリチン軽鎖遺伝子の変異による常染色体優性の神経変性疾患で，組織学的には大脳基底核を主体に神経細胞やグリア細胞に鉄染色，抗フェリチン抗体染色ともに陽性の封入体形成がみられる。世界での剖検報告は4例にすぎず，脳以外への同様の封入体沈着は，肝細胞，線維芽細胞，腎尿細管上皮や血管内皮に限られていた。本症例では肺においてマクロファージや肺胞上皮細胞に多数の封入体形成がみられた点で既報告と異なっていた。背景肺は高度の気腫性変化を伴っており，鉄沈着と肺気腫との関連性についても考察する。

キーワード:lung, neuroferritinopathy, autopsy case

Pulmonary lesions of neuroferritinopathy: an autopsy case with special reference to pulmonary ferritin inclusions and severe emphysema

Reiko Tanaka¹, Tomoe Sawazumi¹, Katsuo Kimura², Mikiko Tada³, Hiroshi Doi³, Sawako Chiba⁴, Masako Otani¹, Naohisa Ueda², Fumiaki Tanaka³, and Yoshiaki Inayama¹

Departments of ¹Pathology and ²Neurology, Yokohama City University Medical Center
³Department of Neurology and Stroke Medicine, Yokohama City University Graduate School of Medicine
⁴Department of Pathology, National Hospital Organization Yokohama Medical Center

（論文受付:2021年 9月10日）

（採用決定:2021年12月17日）