総　　説

甲状腺リンパ腫の病理診断
── 橋本病（慢性甲状腺炎）との鑑別 ──

塩沢　英輔　　　佐々木陽介　　　瀧本　雅文
矢持　淑子

（昭和大学医学部臨床病理診断学講座）

要旨: 甲状腺リンパ腫は稀な節外性リンパ腫である。最も多い組織亜型は MALT lymphoma（69%）であり，diffuse large B-cell lymphoma（25%），follicular lymphoma（6%）がそれに次いでみられる。甲状腺リンパ腫は高齢女性に多くみられ，患者のおよそ80%に橋本病がみられる。橋本病が先行して存在することは，初期のMALT lymphomaと橋本病によって生じる反応性リンパ組織との鑑別を難しくしており，それは両者がしばしば併存し，同じ病変内に組織学的に混在しているからである。いわゆる “Packed follicle“あるいは“MALT ball”と呼ばれるリンパ腫細胞浸潤の特徴的な組織学的所見は，浸潤するatypical lymphoid cellsをMALT lymphomaのリンパ腫細胞であると認識するのに有用であり，詳細な免疫組織化学を併用することによって甲状腺MALT lymphomaの病理組織診断に役立つ。

キーワード:Thyroid gland, Hashimoto’s thyroiditis, MALT lymphoma, Packed follicle, Immunohistochemistry

Pathological diagnosis of thyroid lymphoma and Hashimoto’s thyroiditis

Eisuke Shiozawa, Yosuke Sasaki, Masafumi Takimoto, and Toshiko Yamochi

Department of Pathology, Showa University School of Medicine

（論文受付:2022年 2月20日）

（採用決定:2022年 3月 8日）