症例報告

針生検で浸潤性乳管癌との鑑別を要したAtypical microglandular adenosisの1例

鉄田 汐莉1,2   堀田真智子2   伏見聡一郎2
和仁 洋治3

1滋賀医科大学医学部附属病院病理診断科,2姫路赤十字病院病理診断科,3同 臨床検査科)

1河北総合病院病理診断科,2同 循環器内科)

要旨: 症例は50歳代女性。2ケ月前に乳房超音波検査で低エコー領域を指摘された。生検では軽度の細胞異型を有する上皮からなる小腺管が結節性に増殖する病変であった。上皮は二相性を欠き,脂肪組織への進展が認められた。免疫染色はER,PgR,HER2が陰性,S-100蛋白が陽性であった。鑑別診断としてatypical microglandular adenosis(AMGA),分泌癌,浸潤性乳管癌が挙げられたが確定診断には至らなかった。切除標本は弱拡大で境界明瞭な病変で,生検と同様の細胞からなる島状胞巣が集簇していた。腫瘍胞巣は基底膜に覆われており,胞巣周囲に間質反応は認められなかった。以上より,AMGAと診断した。低異型度浸潤性乳管癌が疑われる病変がER陰性である場合,AMGAを鑑別に挙げることが重要である。その際,S-100蛋白,laminin,W型コラーゲンの免疫染色が診断に有用である。

キーワード:breast, atypical microglandular adenosis, invasive ductal carcinoma


A case of atypical microglandular adenosis difficult to be distinguished from invasive ductal carcinoma of the breast

Shiori Onoda1,2, Machiko Hotta2, Soichiro Fushimi2, and Yoji Wani3

(論文受付:2021年5月12日)

(採用決定:2021年9月8日)