総　　説

膵管癌における最近の分子病理学的知見

林　　玲匡　　　柴原　純二

（杏林大学医学部病理学教室）

要旨:次世代シーケンサーの登場以降，膵管癌においてもその分子生物学的メカニズムが次々と明らかになった。その一方で膵管癌の予後は依然として不良であり，分子標的薬の標的遺伝子もごく一部に限られている。近年のがん遺伝子パネル検査などの新たな分子遺伝学的アプローチにより，病理診断業務においてもより専門的な分子病理学的知識が求められるようになっている。本稿では分子病理学の観点から膵管癌を俯瞰し，近年注目されている腫瘍不均一性やクローン進展の研究も含め，最近の分子遺伝学的知見について概説する。

キーワード:pancreas, pancreatic ductal adenocarcinoma, molecular pathology, next generation sequencing

Recent progress of molecular pathology in pancreatic adenocarcinoma

Akimasa Hayashi and Junji Shibahara

Department of Pathology, Kyorin University

（論文受付:2021年5月12日）

（採用決定:2021年6月4日）