総　　説

肺術中迅速診断における病理従事者のバイオセーフティー
─肉芽腫病変の成因，鑑別に注目して─

杉山　朋子　　　田尻　琢磨

（東海大学医学部付属八王子病院病理診断科）

要旨: 肺外科手術時迅速診断のバイオセーフティーの現状と問題点を概説した。肉芽腫病変の成因は結核/ 非結核性抗酸菌感染症，真菌感染症，過敏性肺炎や異物，サルコイドーシスや血管炎など多岐にわたり，術中迅速診断では原因感染症の特定や鑑別は困難である。特に結核症例ではクリオスタット使用に際し，菌体吸入による検査室感染のリスクがあり，術前術中診断の臨床医との情報共有は不可欠である。術中細胞診や組織診における検体の取り扱いや検査に伴う感染を回避するため，肺迅速診断に関するバイオセーフティー指針の作成が望まれる。

キーワード:intraoperative rapid pulmonary examination, biosafety, intraoperative rapid cytology diagnosis, granuloma, tuberculosis

Biosafety for the protection of medical staff during intraoperative examination of pulmonary lesions : the cause of granulomatous lesion and their differential diagnosis

Tomoko Sugiyama and Takuma Tajiri

Department of Diagnostic Pathology, Tokai University Hachioji Hospital

（論文受付:2021年7月13日）

（採用決定:2021年7月19日）