症例報告

術前に脳腫瘍との鑑別を要した神経有鉤嚢虫症の1例

加藤憲一郎¹　　　川名　秀忠¹　　　荒木　章伸¹
杉山　孝弘¹　　　及川麻理子¹　　　堺田　　司²
伊丹真紀子¹

（¹千葉県がんセンター臨床病理部，²同　脳神経外科）

要旨: 日本国内での神経有鉤嚢虫症の報告は稀であり，脳腫瘍との鑑別を要した神経有鉤嚢虫症を経験したので報告する。症例は若年，女性。東南アジアへ定期的に渡航していた。突然の全身性痙攣で発症し，頭部MRIで右前頭葉にリング状造影効果を示す1 cm 大の腫瘤性病変と周囲の浮腫性変化が指摘された。神経膠腫が疑われ，開頭腫瘍摘出術が施行された。術中迅速診断では通常の脳組織中にはみられない嚢胞壁様構造物と肉芽腫様組織を認め寄生虫疾患を疑った。切除検体内に小鉤を有する頭節を認め，神経有鉤嚢虫症と診断した。

キーワード : brain, neurocysticercosis, histology

A case of neurocysticercosis requiring differentiation from brain tumor

Kenichiro Kato¹, Hidetada Kawana¹, Akinobu Araki¹, Takahiro Sugiyama¹, Mariko Oikawa¹, Tsukasa Sakaida², and Makiko Itami¹

Divisions of ¹Surgical Pathology and ²Neurological Surgery, Chiba Cancer Center

（論文受付:2021年3月31日）

（採用決定:2021年5月24日）