症例報告

上行結腸癌による肺腫瘍血栓性微小血管症の剖検例

浅井　沙月¹　　　清瀬ますみ²　　　田中　康博²　　　石原　美佐¹　　　橋本　公夫¹

（¹神戸市立西神戸医療センター病理診断科，²同　免疫血液内科）

要旨: 80歳代，女性。リンパ節転移，肝転移を伴う上行結腸腫瘍の症例で，生前確定診断に至らずに死亡した。剖検では，上行結腸の低分化腺癌とともに，肺腫瘍血栓微小血管症を認めた。腫瘍はBRAF V600E変異と高頻度マイクロサテライト不安定性を有していた。大腸癌由来の肺腫瘍血栓微小血管症は稀であり，過去に報告されている3例との比較では，うち1例と上行結腸原発かつ非充実型低分化腺癌という共通点を認めた。一方，肺腫瘍血栓微小血管症と遺伝子変異の関連については，過去の文献検索を行ったが不明であった。

キーワード : lung, ascending colon cancer, pulmonary tumor thrombotic microangiopathy, BRAF mutation, autopsy

An autopsy case of pulmonary tumor thrombotic microangiopathy caused by ascending colon cancer

Satsuki Asai¹, Masumi Kiyose², Yasuhiro Tanaka², Misa Ishihara¹, and Kimio Hashimoto¹

Departments of ¹Pathology and ²Clinical Immunology and Hematology, Kobe City Nishi-Kobe Medical Center

（論文受付:2021年1月27日）

（採用決定:2021年3月26日）