症例報告

卵巣原発の卵黄嚢腫瘍への分化を伴う腺癌の1例

木村　寛子¹　　　深澤　　寧¹　　　小田嶋　俊²
清川　貴子¹

（¹東京慈恵会医科大学病理学講座，²東京慈恵会医科大学産婦人科学講座）

要旨: 卵巣卵黄嚢腫瘍は，若年女性に好発する悪性胚細胞性腫瘍であるが，まれに上皮性腫瘍を基盤に発生することがある。卵黄嚢腫瘍成分を認識できれば，血清AFPを術後の再発マーカーとし得ることから臨床的に重要である。悪性上皮性腫瘍から発生した卵黄嚢腫瘍の典型例を報告する。患者は50代女性，主訴は腹部膨満感である。摘出された左卵巣は，充実性成分を伴う径20cmの嚢胞性腫瘤を形成し，組織学的・免疫組織化学的に，卵黄嚢腫瘍への分化を伴う明細胞癌と類内膜癌の混合癌で，背景には子宮内膜症性嚢胞を認めた。

キーワード:ovary, yolk sac tumor, adenocarcinoma, somatically derived, perimenopause

A case report of yolk sac tumor arising in adenocarcinoma of the ovary

Hiroko Kimura¹, Nei Fukasawa¹, Suguru Odajima², and Takako Kiyokawa¹

Departments of ¹Pathology and ²Obstetrics and Gynecology, The Jikei University School of Medicine

（論文受付:2020年11月24日）

（採用決定:2021年2月8日）