症例報告

タモキシフェン治療後に発生した神経内分泌癌を伴う子宮癌肉腫の1例

若松　早穂^1,2　　　星　　暢夫¹　　　辻　賢太郎⁴
阿部　　信¹　　　星　サユリ¹　　　町田　静生³
有馬　宏和³　　　高木　偉博³　　　關口　　勲³
平林かおる¹

（¹栃木県立がんセンター病理診断科，²済生会宇都宮病院病理診断科，
³栃木県立がんセンター婦人科，⁴自治医科大学附属病院病理診断部）

要旨: タモキシフェン長期投与後の子宮内膜腫瘍は低悪性度の腫瘍が主体であるが，頻度は高くないものの癌肉腫のような高悪性度腫瘍の発生もみられる。タモキシフェン長期投与後の経過観察においては高悪性度子宮腫瘍の発生にも留意すべきである。患者は60代女性。既往に乳癌（11年前）があり，術後5年間のタモキシフェン投与の後，6年が経過している。3ケ月前から不正出血があったため近医を受診したところ，内膜組織診で悪性の診断となり，当院婦人科紹介となった。精査の結果，準広汎子宮全摘術・両側付属器切除術・傍大動脈リンパ廓清術の方針となった。子宮および両側付属器が摘出され，肉眼的に子宮体部と頸部には非連続性の腫瘍が存在し，それぞれ白色充実成分と粘液性成分を有していた。組織学的には紡錘形ないし短紡錘形腫瘍細胞の増生からなる肉腫成分が主体であり，横紋筋肉腫・軟骨肉腫の成分も含んでいた。これらに混じて腺癌成分が存在することより癌肉腫と診断した。さらには神経内分泌癌の成分も伴っており，稀少な症例と考え報告する。

キーワード:uterus, carcinosarcoma, neuroendocrine carcinoma, tamoxifen, heterologous component

A case of uterine carcinosarcoma with neuroendocrine carcinoma after tamoxifen treatment

Saho Wakamatsu^1,2, Nobuo Hoshi¹, Kentaro Tsuji⁴, Makoto Abe¹, Sayuri Hoshi¹, Shizuo Machida³, Hirokazu Arima³, Yoshihiro Takaki³, Isao Sekiguchi³, and Kaoru Hirabayashi¹

Departments of ¹Pathology and ³Gynecology, Tochigi Cancer Center
²Department of Pathology, Saiseikai Utsunomiya Hospital
⁴Department of Pathology, Jichi Medical University Hospital

（論文受付:2020年9月17日）

（採用決定:2021年1月15日）