総　　説

成人剖検例からみた劇症細菌感染症の病態
─宿主の立場から─

楯　　玄秀¹　　　田尻　琢磨²

（¹昭和大学藤が丘病院臨床病理診断科，²東海大学医学部付属八王子病院病理診断科）

要旨: 成人劇症細菌感染症の剖検例を病理学的に俯瞰してみた。剖検では血液肝疾患が主体で初発症状は消化器症状やショックおよび筋肉痛であった。死因は敗血症性ショックに伴う循環不全死で，重症感染症でありながら肺炎像は乏しかった。血液生化学的に白血球の増加の程度に比してCRPの上昇の程度が顕著であった。理由は菌体感染に対する宿主の過剰な免疫応答による高サイトカイン血症から血管透過性亢進による急激な体循環量の低下が想定された。発症は菌体の毒性の強さと宿主の防御能の相互作用で生じるため両側面から病態を考えるべきである。

キーワード:autopsy, fulminant bacterial infection, sudden death, cause of death, bacteremia

Pathophysiology of fulminant bacterial infection from host side studied by autopsy cases in adults

Genshu Tate¹ and Takuma Tajiri²

¹Department of Clinical-Diagnostic Pathology, Showa University Fujigaoka Hospital，²Department of Diagnostic Pathology, Tokai University Hachioji Hospital

（論文受付:2020年10月3日）

（採用決定:2021年1月7日）